2型糖尿病と糖質制限

2型糖尿病患者が解説する糖質制限(考え方と注意点)
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この記事を読むとわかること

この記事では、2型糖尿病患者が糖質控えめの食生活を実行するにあたり、糖質制限に対する考え方や注意点を患者の立場から紹介しています。

近年はダイエット目的で糖質控えめの食生活を心がける方が増え、WEBサイトやSNSで簡単に情報入手できるようになりました。しかし、その多くは健康な人に向けた成人病予防のための情報であり、既に2型糖尿病を罹患して治療中の方には不向きな内容も存在します。

無理なく2型糖尿病と付き合っていくために、私の経験が参考になれば幸いです。

糖質制限?ロカボ?結局なんなの?

糖質控えめの食生活と言うと、糖質制限や糖質オフ、ロカボなどの言葉が思い浮かぶと思いますが、まずはそれぞれの定義をおさらい。

糖質オフとは

糖質オフとは、一般的な同類品と比較して糖質量の摂取を減らす行為のこと。または従来品と比較して糖質量を低減した食品のこと。

糖質オフについては2023年7月現在で表示基準が法律で定められておらず、販売者の責任のもとで自由に「糖質●●%オフ」のような表示が可能ですが、糖類オフの表示基準については食品表示基準の別表第十三で明確に定義されています。

糖質制限とは

糖質制限とは糖質からのエネルギー摂取を抑制する食事スタイルのこと。

糖質摂取量については目的によって制限レベルが異なりますが、それらの明確な基準はありません。制限レベルごとの呼び名も「極度の糖質制限」や「スーパー糖質制限」など文献によって統一されていないのが現状です。

ロカボとは

ロカボは、一般社団法人 食・楽・健康協会登録商標です。

似ている語句にローカーボ(低炭水化物)がありますが、こちらは糖質制限全般を指す一般的な語句で、厳しい糖質制限も含んでしまう概念です。それに対し、食・楽・健康協会が推奨する「ロカボ」は、緩やかな糖質制限を提唱しています。

糖尿病と糖質制限レベル

では、糖尿病患者が糖質制限を行う場合、どの程度が適正なのでしょうか。制限レベルによる違いを解説します。

ゆるやかな糖質制限

2型糖尿病患者である私が実践しているのは、こちらの「ゆるやかな糖質制限」です。食・楽・健康協会では、1日あたりの糖質摂取量70~130gを適正糖質として提唱しており、糖尿病ネットワークでも紹介されています。

糖尿病臨床現場で行う”ロカボ”のすすめ|糖尿病ネットワーク

普段の食事の中で、糖質量が低めの代替食品を用いたり、主食の量を減らすかわりに主菜や副菜を増やしたり工夫することで、糖質摂取量を減らします。糖質以外はたっぷり食べられるため、十分に満足感を得られます。

実は空腹感は血糖値の変動に影響を受ける感覚であり、血糖値の変動が緩やかになると強い空腹感を感じることが少なくなります。また、たんぱく質や脂質は糖質よりも消化吸収に時間がかかるため、糖質中心の食事より腹持ちが良いとされています。

実際に取り組んで1年弱になりますが、毎日お腹いっぱいでダイエットという感覚はなく、この先も無理なく継続できると確信しています。

糖質には依存性があるので、はじめの頃はパンやスイーツなどを食べたい欲求と闘いましたが、半年過ぎた頃には強い欲求は収まり、おやつの時間に甘いものを食べたいと思うことがなくなりました。

厳しい糖質制限

「スーパー糖質制限」や「ケトジェニックダイエット」とも呼ばれ、近年注目されているダイエット方法のひとつです。

殆どの日本人は炭水化物(糖質+食物繊維)を主食として生活しており、エネルギー源として糖質が優先的に使われています。三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)の中で、炭水化物に含まれる糖質は消化吸収が早く、エネルギー効率が良い栄養素であるとともに、穀物類は長期保存が可能で安定供給しやすい食物だからです。

主食である糖質の摂取量を極度に制限すると、一時的に身体が飢餓状態になります。そうなると、三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)のうち、脂質とたんぱく質を積極的に利用して生命維持できるよう、消化吸収の回路が切り替わります。

糖質を摂取しなければインスリンの分泌はされません。逆に言えば、脂質とたんぱく質は消化吸収にはインスリンの分泌を必要としません。インスリンを必要としない栄養素を主に生活できれば、糖尿病患者も投薬をせずに血糖コントロールが可能であるという考え方から、一部の糖尿病専門医は厳しい糖質制限を推奨しています。

しかし、現代人は長らく炭水化物中心の食生活をしてきました。長期にわたり厳しい糖質制限をした場合、将来的に身体にどのような影響が出るかはわかっていません。また、糖質を摂取することで回路は元に戻ってしまうため、厳しい糖質制限は徹底的にやらなければ意味がなく、長期的に取り組むには相応の覚悟が必要です。

投薬治療中は糖質制限しすぎに注意!

血糖コントロールには、糖質摂取量のコントロールが効果てきめんですが、投薬治療中の方は低血糖に十分注意しなければなりません。

グリニド薬のようなインスリン分泌薬やインスリン注射を用いて治療中の場合、糖質量の摂取を減らすことでインスリンが効きすぎてしまい、低血糖を引き起こす危険性があります。

また、通常は糖質摂取量が不足すると肝臓が糖新生を行うことで血糖値を上げようと働きますが、メトホルミンなどのピグアナイド薬を服薬している場合、薬の効果で糖新生が抑制されます。

どれくらい糖質摂取量を減らしても問題がないのか、ベストな糖質制限レベルは体質や投薬状況によって異なります。ご自身の投薬状況をしっかり理解し、かかりつけ医に相談しながら糖質摂取量を調整していくことをお勧めします。

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この記事を書いた人

1978年生まれ。運動することが精神的ストレスになるくらいの運動嫌い。31歳で2型糖尿病が発覚。44歳で一念発起し、ゆるやかな糖質オフをスタート。半年かけて体重58kg→51kg(身長158cm)に減量成功。

モットーは「頑張らない!無理しない!」

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